日本歌曲を勉強するなら藍川由美さん(ソプラノ)を聴こう!
どうも!タラッタです。
日本歌曲、唱歌、童謡等々、明治時代以降には日本でも西洋音楽がたくさん生み出されました。
西洋音楽を中心に取り扱っている音楽大学では、なかなか日本の音楽について学ぶ機会がありませんが、声楽専攻だった私は、幸い、そういったジャンルの歌を通して日本の文化に目を向けることができました。
さて、この記事にいらっしゃった方は、きっと日本歌曲や唱歌・童謡などに興味があり、しっかりと勉強を進めていきたいという思いがおありのことと思います。
それは大変素晴らしいことで、やはり日本人として、誇りを持って取り組んでいくのが理想ですよね。
そこで今回は、日本歌曲の権威である藍川由美さんという方をご紹介したいと思います。
藍川由美さんについて
藍川さんは、日本歌曲をはじめ、唱歌・童謡、歌謡曲、軍歌等々、日本の歌に関するスペシャリスト(歌唱面でも学術面でも)です。東京芸術大学大学院の博士課程を出て、日本で初めて声楽(ソプラノ)として学術博士号を取得した方でもあります。
CDも非常に数多く出しており、同じ日本の歌でも、そのジャンルや趣は多岐にわたります。
一言で言うなら、とにかく凄い人。そして凄まじいエネルギーを感じます。と同時に、音楽への愛情や信念も感じます。ここまで日本の歌や作曲家のことを大切に考えている方は、私の周りに全然いませんよ。
藍川さんのプロフィールや演奏活動に関しては、ぜひ彼女のホームページをご覧ください♪
彼女を避けて日本の歌を学ぶことはできない
藍川さんは、書籍を出したり楽譜の校訂を行ったりもされていますが、中でも、日本の歌のあるべき姿を描いた『これでいいのか、にっぽんのうた』(文春新書)は、一読に値しますね。私も、レッスンで生徒にオススメしています。
世の中、探してみれば日本の歌に関する研究は思った以上にあるのですが、日本の歌を学ぶ上で、藍川さんの書物やCDは避けては通れないでしょう。
声楽家目線での研究と、それを裏付ける歌唱
他の学者方と大きく違うのは、やはり声楽家目線であることです。だからこそ、多くの歌い手にとって勉強になります。よくありがちな机上の空論ではありません。それは、彼女が自らの研究に基づいた歌唱をCDで聴けば分かるかと思います。
私は、高校時代、藍川さんの存在を『ゴンドラの唄~中山晋平作品集』というCD(←母が図書館で借りてきた)で知り、最初は「なんだこの歌い方は」と思っていました。ハッキリ言うと、文字で言えば明朝体のような教科書体のような、そんな感じの歌だったのです。
その後しばらく、藍川さんには興味を示していなかった私ですが、大学生時代に音大図書館で偶然『日本の唱歌』という楽譜(藍川さん著)を借りたのが、彼女にハマり出したきっかけでしたね。そこから色々読んだり聴いたりしていくうちに「スゲぇ」と私は感嘆しました。
その流れで、高校時代に聴いた『ゴンドラの唄~中山晋平作品集』を改めて聴き直し、その歌唱がいかに素晴らしいものかが分かりました。
もちろん、歌い方に答えはないですが、藍川さんは、史実や作曲者たちの意思、音楽理論、言語等々を踏まえた正当な歌い方をされていましたし、今もされているはずです。
感じ方も人それぞれかもしれませんが、丁寧かつ聴きやすい日本語。そして端正ながらもパワーを秘めている、そんな歌唱だなあと思います。
一部の人は「なんか近づきがたい」「勉強にはなるけど、好んで聴こうとは思わない」といって藍川さんを敬遠していますが、私はむしろ好きです。非常に聴きやすいし、音楽を頭の中で具現化しやすいですね。
これは、彼女が歌うほかの日本の歌にも言えることです。
日本の歌を勉強するなら、藍川さんの歌唱は、聴いたほうが良いでしょう。もちろん鑑賞用としてもオススメですね。私は、彼女の歌を流しながらドライブしていたこともありますよ(笑)
あ、そうですね、CDの解説書を熟読するのも大切かもしれないです。
むしろ、「なんでこんな歌い方をするのか」とか「あれ、この歌詞おかしくない?」って思ったとき、解説を読むと理解できるときがあります。
日本歌曲の歌唱法は、西洋歌曲のそれとは異なる
藍川さんに関する話から逸れますが、声楽家が歌う日本歌曲って、なぜか不自然ですよね。
悪い意味で西洋チックだし、そもそも何を歌っている(日本語)のかが分からない・・・。
たしかに、明治時代以降の日本の歌は、西洋クラシック音楽の影響を大きく受けているので、ある程度その要素があってもいい(というか、無いとおかしい)です。
しかし、日本語による歌詞が付いているという点や、日本人の作曲家による音楽ということもあり、完全に西洋音楽として見なしてしまうのは、明らかにおかしいですよね。
私の割と身近にいる声楽家に、日本歌曲を完全にイタリアの発声にあてはめて歌っている方がいます。酷い人だと、イタリア語の母音と同じように発声しようと言っていました。
それでは、日本語が台無しになってしまうような気がしませんか?
それと、音楽の作り方にもよりますが、曲によっては日本的な節回しを必要としている歌曲もあります。日本ならではの歌唱法…というと大げさかもしれませんが、その妙味を活かした歌い方というのも存在します。
まあ、細かいことを言い出すとキリがないので割愛しますが、そういったところも繊細に取り扱っていかなければ、日本歌曲が日本歌曲として、立派に存在しえないのではないか?と思いますね。
私は偉そうなことを言える立場ではありませんが、もっともっと、日本歌曲のことを、独立したジャンルとして、きちんと取り扱うべきではないかと思います。
音大でだって、日本の歌に関する授業は少なかったし、西洋のそれのように深い講義もセミナーもあまり行われていないような気がします。これは、日本の音大として、あっていいことなのでしょうか。
・・・と、ちょっと熱くなってきてしまったので、ここらで終えておこうと思います(^^;)
まとめ
最後、ちょっと突っ走ってしまいましたが、藍川由美さんの書籍やCDで、日本歌曲の歌唱法や作品について勉強していくことは、非常に大きな意義を持つと思います。
もちろん、藍川さんばかりが全てではないので、色々な人のCDなどを聴くことも大切ですね。
ひとりだけに偏ってしまうのも、それはそれで良くないと思います。
私が言いたかったのは、藍川さんは避けては通れないでしょうね~ということなので、誤解なさらずに・・・。
というわけで、今回は藍川さんのご紹介でした。
藍川さんの歌、ほんといいですよ~!!
おすすめの書籍・CD
これでいいのか、にっぽんのうた (文春新書)
「日本のうた」歌唱法 (CAMERATA)