オペラと歌曲の違いについて、改めてまとめてみました

どうも!タラッタです。

声楽のことをあまり知らない人に「声楽をやっています」と言うと、こう返ってくることがあります。

「ああ、オペラですね!将来はやっぱりオペラ歌手になりたいんですか?」

でも私はこの返事が好きではありません。きっと素人からしたら、声楽のあの独特な歌い方は全てオペラということになるのでしょう。「千の風になって」で一世を風靡した秋川雅史さんだって、彼らにしてみてはオペラ歌手となってしまうのです(実際にオペラに出演しているか否かは別として)。

この記事にいらっしゃった方も、オペラと歌曲の違いってよく分かっていないのではないでしょうか?同じ職場の人に「今度どこどこでオペラを歌われるんですね」と言ったところ「違うよ。歌曲だよ」と言われた経験とか、似たような経験は無いでしょうか?

オペラと歌曲は、たしかにどちらも声楽ですが、似て非なる物です(いや、似てすらいないかも!?)。声楽家である私が簡単に説明をしてまいりますので、ここで改めておさえていただけたらと思います。

オペラとは、歌曲とは

まず手っ取り早いのは、単純に言葉の意味や定義などをまず把握してみることですね。

オペラとは

オペラ(Opera)とは、簡単にいえば、音楽と演劇、そして美術が組み合わさった、総合舞台芸術のことを意味します。日本語で歌劇と呼ぶこともあります。基本的には、客席からはあまり見えないところにオーケストラがいて、舞台上は演劇と同じ感じです。ただ、セリフよりも歌に重きが置かれています。歌手は当然、演技もしなければなりません。

オペラは、ルネサンス後期(16世紀末)、イタリアのフィレンツェで古代のギリシャ悲劇の復興が試みられたことに端を発します。主に貴族の娯楽として発展し、やがては大衆の娯楽となっていきました。

最初はギリシャ悲劇に由来する悲劇的内容が多かったものの、次第に喜劇的内容も増え、ヨーロッパをはじめ、世界各地で人気を博すようになりました。で、現在に至ります。でも実際に日本で頻繁に上演されてるオペラは、主に古典派以降(だいたい18世紀後半以降)のものばかりです。

歌曲とは

歌曲とは、読んで字のごとく歌の曲です。独唱または重唱(数人で歌う)によるシンプルな形式です。そこにピアノや他の楽器の伴奏が伴うことが多いですが、無い場合もあれば、歌い手に匹敵するほどの重要な立場であることもあります。

ドイツ歌曲のことはことさらにリートと呼んだりします。同じく、フランスではメロディやシャンソン、イタリアではロマンツァやカンツォーネと呼んだりします。日本には日本歌曲があります。基本的に、唱歌、童謡、流行歌、演歌などは日本歌曲として扱いませんが、人や物によっては、一緒くたになっていたりします。私も「一緒にしてまえばええがな」って思っています(笑)

ただ、歌う曲だからといって、何もかもが歌曲として定義されて良いわけではなく、独立した一曲ないし数曲のことを指して呼びますので、オペラの中の一曲は歌曲とは普通言いません。例外として、声楽初心者が大抵習う「イタリア歌曲」があります。それには、かつてのバロックオペラの中で歌われていたものが多いです。

歌曲のルーツは、当然大昔からあったわけですが、一ジャンルとして目まぐるしく発展していったのは、古典派の時代(18世紀)以降で、ロマン派時代の19世紀前期に盛りとなります。

まあ、簡単なウンチクはそんな感じです♪

違いはそれだけではありません

ここからは少し込み入った話になりますが、オペラと歌曲の違いは、まだまだあります。歌声についても然り、表現方法についても然り、売りとするものについても然り。魅力の面でも全然違うし、求められているものも違うわです。

オペラの歌い手に求められるもの

オペラは、いわば演劇の仲間とも言えます。歌い手は役になりきり、広い舞台で演じます。ただ、セリフよりも歌が重視されます(セリフが全く0なのも普通です)。共演者とのアンサンブルや掛け合いも見どころですし、とにかくマルチプレイです。

歌い手には、役に合った所作、歌声、感情表現が必要であることは言わずもがな。演出家がいて、指揮者がいて、共演者もいて・・・。多くの人と一舞台を創っていきますから、そういったコミュニケーション能力や協調性も必要です。

そしてシーンの中の一時の感情を思いっきり歌い上げる歌(アリアといいます)で、とにかく“良い声”で観客を魅了し、引きつけ、大きなストーリーの世界に引きずり込むのです。それだけの力量が、歌い手には求められます。なので、一流のオペラ歌手は皆、素晴らしい歌声を武器にしています。

一方で、オペラの聴き手は視覚情報に頼りながら鑑賞することができます。演技や美術があるので、いわば映画やアニメを観ているような感覚に近いかもしれません。歌い手が歌詞を多少感情過多に煩雑に歌っても、それがけっこうしっくりきたりします。

ですから、オペラの歌い手は、いかに素晴らしい声で感情を発露するか?が任務となるでしょう。

まあ、考え方は人によって違うかもしれませんが、私はそういった認識をしています。もちろん、オペラといっても幅が広いので、そういった考えが常に正しいわけではないと考えてはいます。

歌曲の歌い手に求められるもの

歌曲は、非常にコンパクトです。基本的に演技も無いし、演出家も指揮者もいません。そして、多くは一曲ないし数曲で完結します。手短でスッキリしています。悪く言えば質素ですね。

だからか、「歌曲のほうがオペラよりも劣っている」と豪語する声楽家もいるほどです。

しかし、それはとんだ勘違い。歌曲も非常に奥の深いもので、時に厄介です。

歌曲では、もちろん歌声も大切ですが、とにかく様式美や歌詞を重視します。たったこれだけ!?っていうくらいの長さしかなくても、そのバックにはオペラに匹敵するほどの濃密なストーリーがあるでしょう。

そもそも歌詞こそ文学作品ですから、言葉ひとつひとつの持つ意味や美しさといったものを、濃~く濃~く緻密に表現していくのが当然です。その前に、歌詞に対する深い理解力や分析力などの知性も必要となってきます。

また、オペラには演技があり、あらかじめ視覚的情報も多いですね?だから歌い手は、それに同化して歌っていきます。が、歌曲にはそういうのが全くないから、どうイメージするかは全て聴き手次第。言ってしまえば、視覚情報に頼れない代わりに、自由に妄想することが可能なのです。

そのため、歌曲の歌い手は、その妄想の余地をいかに聴き手に与えるか?が大切になってくるでしょう。歌い手や伴奏者はバックに広大なストーリーと感情を持ちつつも、その蛇口をあえて閉め、様式を守りながら理性的に音楽を奏でていくのです。

そうやって聴き手に妄想の余地を与えるといった点では、朗読や昔話を聴く感覚と似ているかもしれませんね。歌曲は地味かもしれませんが、そこがまた最大の魅力でもあるのです。

オペラは肉食系、歌曲は草食系

便宜上、最近の流行の言葉をお借りしますね。まあ、肉食系とか草食系とか、その言葉の定義も私はよく分かっていないですが、イメージで使いたいと思います(本当はあまり使いたくない言葉ですが^^;)。

さてずばり、オペラは肉食系、歌曲は草食系、と言えるでしょう。

オペラは、歌い手にとっては「俺の歌声を聴いてみてくれ!そしてこの世界に誘ってみせよう!」といった醍醐味があります。一方、歌曲には「どう想像し感じるかは貴方次第です。良かったら聴いてみてください」といった醍醐味があります。

そういった意味で、オペラは肉食系、歌曲は草食系、と言えましょう。

逆に、肉食系のあなたは歌曲を聴き、草食系のあなたはオペラを聴くっていうのが理に適っているかもしれませんよ(笑)・・・あ、ウソです。受け身になって純粋に楽しみたいときはオペラ、頭を働かせて好き勝手に妄想したいときは歌曲がイイかも、です♪

以上、あくまで私の主観でございます。

まとめ

オペラと歌曲の違い、ざっとご理解いただけましたでしょうか?

オペラは総合舞台芸術。演技を伴いながら素晴らしい歌声で感情表現。歌曲は、深い知性・理性でもって調べを淡々と奏でる。かなりざっくり言えばそういう感じです。

けれども、それはあくまで、あえて考えを分断したのであって、必ずしもそうだとは言い切れません。オペラにも様々なスタイルがあります。様式美や客観性を重視するオペラもあるでしょうし、逆にドラマチックな歌曲だってあります。

今回のお話は、あくまでおおよそのイメージです。

オペラにせよ歌曲にせよ、どんな曲を歌うにせよ聴くにせよ、一曲一曲に対して真摯な態度と素直な気持ちを持つことで、その曲のあるべき姿が見えてくるのではないか?と思います。

では、以上といたします。ありがとうございました!

 
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